埋蔵文化財部門 木製品遺物の保存

木製品遺物イメージ

わが国には湿潤な遺跡が多く、そこから出土する遺跡は異常に水分を含んでいます。木製品遺物の場合、主な樹脂分が抜け、代わりに大量の水を含んでおり、高野豆腐のようにもろくなっています。過剰に含まれる水分を高分子物質のポリエチレングリコール(PEG)や、糖アルコール(ラクチトール)と置き換えて恒久的な保存がはかられています。また、木材に含まれる水分を強制的に取り除いて遺物を安定させる真空凍結乾燥法もあります。各種樹脂薬品や装置の方も取り揃えています。

PEGによる保存処理

PEGによる保存処理のフロー図

1.洗浄
木材に付着した泥や汚れの洗い落とし。特に割れ目や隅の洗浄を丁寧に。
2.事前保護
木材に傷が付いたり、あるいは変形しないよう布を巻き付け、支持板を添えて補強。
3.水溶液の作成
通常の出土木材では、最初に準備するPEG水溶液の濃度はおよそ20%。
4.保存期間の設定
遺物の保存状態をよく観測し、保存処理に必要な期間(通常は年単位)を設定計画。
5.濃度管理
保存処理中の最重要事項はPEG溶液の濃度管理。赤外線水分計は簡易で迅速な濃度計。

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糖アルコールによる保存処理

糖アルコールによる保存処理のフロー図

1.前処理
木材に付着した泥や落とした後に、EDTA-2Naの1%水溶液に浸けて脱色。
2.含浸処理
30%程度のラクチトール水溶液に浸漬します。溶液の腐敗防止に防腐剤を添加します。
3.加熱含浸処理
65〜80℃で、加熱含浸します。85%程度まで濃縮します。
4.洗浄・乾燥
含浸終了後は表面のラクチトールを水で洗い流し、水分を拭き取り、乾燥させます。
5.結晶化・乾燥
結晶化の促進には微粉末を表面に散布し、乾燥・洗い流し、再び乾燥させます。

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真空凍結乾燥装置による保存処理

真空凍結乾燥装置による保存処理のフロー図

1.洗浄
遺物はもろく複雑な形のものが多い。洗浄は丁寧に。木簡は墨書部分を注意深く取り扱う。
2.前処理
出土状態のまま乾燥は可能だが、事前に溶剤や樹脂をしみこませる前処理法が効果的。
3.予備凍結
予備凍結時の結晶を大きくしないためには、極力低温で、急冷するのがこつ。
4.真空乾燥
乾燥中の真空度は高いほどよい。コールドトラップの温度は低いほど乾燥能率がよい。
5.乾燥終了
乾燥終了の目安は、遺物の重量が一定になったとき、真空上昇が止まったとき。

PEG含浸装置 温風循環方式の商品写真 PEG含浸装置 熱媒体循環方式の商品写真 真空凍結乾燥機の商品写真 真空凍結乾燥機(大型)の商品写真

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